本項による契約解除権が行使されない場合に、賃貸人の承諾を得ない賃借権の譲渡又は転貸借は、どんな効力を有するか。
判例は、それは無効ではなく、単に賃借権の譲受人または転借人がその賃借権を賃貸人に対抗できないだけであるとする。その結果、賃借権の譲渡または転貸をしたものは、譲受人または転借人に対する関係で賃貸人の承諾を求める義務を負担する(大判明治43・12・9民録16輯918頁)。
我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権』1097頁

やっぱり無効じゃないらしい。当初の勘が当たってた気配。
今日なら借々19条の申立てをする義務も負担しそうな気がする。つまり譲受人は譲渡人に対し裁判所に申し立てるように請求できそうだ、と。
そんなら債権者代位できないか、と思ったら、こんな感じらしい。

借地権者が、借地権設定者の承諾も、これに代わる許可の裁判も求めようとしないとき、建物譲受人が借地権者に代位(債権者代位権)して、本状による申立てができるかどうかが問題となる。決定例はこれを否定する(東京高決昭42.9.11判時492-59、東京地決昭43.9.2判タ227-208など)。学説は肯定する説(西村・実務民訴214)もあるが否定説が多い(加藤=吉田・新基本コンメ204、鈴木=生熊・新注民(15)526参照。これらは、これを認めると、一般的に建物譲受人からの申立てを肯定するのと結果的には変わらないから、否定すべきであろう、という)。次に述べるように、建物譲渡後に為された申立てもそれだけで却下されるべきものではないので、譲渡代金を支払った建物譲受人等に代位請求を認めるべき場合もあろう。
コンメンタール借地借家法』137頁

そうそう、無断譲渡後にこの申立てができるかについては、↑の直後に書いてある。

申立ての時期については、文理上は建物の譲渡前であるが、今日の多数説は、建物譲渡後になされた申立てもそれだけで却下されるべきものではなく、この点も、考慮されるべき「一切の事情」(本条2項)の一つとして、総合的見地から当該申立ての認否が決せられるべきであるとする(星野・借地借家308、加藤=吉田・新基本コンメ205、鈴木=生熊・新注民(15)529)。
コンメンタール借地借家法』138頁

疑問はだいたい解消された。


でも無断譲受人が明渡請求を受けたときに借々19条を使うという話は聞かない。
たぶん、それでは間に合わないから使えないんだろう。
譲受人がこれを使うとすれば、賃貸人は何も言ってこないけどこのままじゃ不安だからきっちりしたい、という時になるんだろう。
そうだとすれば、賃貸人の攻撃を基準に考える今回の答案では、借々19条についてはそもそも考える必要がないのかもしれない。


結局Cの対抗手段は特段の事情の主張になるんだろうけど、これが認められた判例の譲渡の当事者の近さを考えると、無理だろうね。
この辺の答案を書くにあたっては、山敬せんせの本が、《賃貸人の主張→譲受けた第三者の抗弁》という構成で書かれていて、すんごく参考になりそうだ。
やっぱり山敬せんせの教科書買っとく。だから続刊出してください先生。


シャム双生児の牛の標本を見た。
これまでシャム双生児は写真でしか見たことなかったけど、牛とはいえ、生で見るとすごくもの凄い。
ところでシャム双生児の牛で作ったソーセージ